結論
生命保険は「全員に不要」でも「とりあえず大きく入るもの」でもない。残された家族に必要なお金から、公的保障・配偶者の収入・貯蓄を引いた不足額だけを、必要な期間だけカバーするものだと考えるのが分かりやすい。

保険を考える前に、三つだけ確認する

  1. 自分が亡くなった時、家族にいくら不足するか。 生活費、教育費、住居費から、遺族の収入と公的保障を引いて考える。
  2. その不足は何年続くか。 子が独立するまでなのか、住宅ローンが残る期間なのか。必要保障額は年齢とともに通常は減る。
  3. すでに持っている資産で埋められるか。 預金、投資資産、会社の死亡退職金、住宅ローンの団信なども確認する。

この順番を飛ばして「死亡保障5,000万円」と決めると、足りない場合も、払いすぎる場合もある。

公的保障は、最初に確認する

会社員など厚生年金の加入者が亡くなった場合、要件を満たせば遺族厚生年金があり、子がいる配偶者などには遺族基礎年金もある。2026年度の遺族基礎年金は、子のある配偶者の場合、年額84万7,300円に子の加算額が上乗せされる仕組みだ。遺族厚生年金は、亡くなった人の報酬・加入期間などで変わる。

つまり「遺族年金はいくら」と一つの生涯総額で置くのは危険だ。家族構成、収入、加入歴、将来の制度改正で金額は変わる。2028年には遺族厚生年金の見直しも予定されている。まずはねんきん定期便や公的機関の試算情報をもとに、自分の家族の条件で確認したい。

必要なお金遺族の生活費
+教育費
+住居・葬儀などの一時費用
すでにあるお金遺族年金
+配偶者の収入
+貯蓄・投資資産
+団信など

左から右を引いた残りが、民間の死亡保険で考えるべき金額になる。

「20年で380万円」の見方

仮に月額1万5,800円の掛け捨て保険を20年間続けると、支払保険料は約379万円になる。これは小さくない。だからこそ、必要保障額が小さくなったら、保険金額や期間を見直す価値がある。

同額を毎月積み立てた場合、元本だけでも約379万円になる。年率5%で運用できたと仮定すると、20年後はおよそ620万円になる計算だ。ただし投資には元本割れがあり、死亡直後の大きな不足額を埋める機能はない。

ここが保険と貯蓄の役割の違いだ。保険は低い確率だが起きた時の損失が大きい出来事を、すぐに埋めるためのもの。貯蓄・投資は、時間をかけて自分で保障を育てるもの。二者択一ではなく、資産が少ない子育て期は保険、資産が育つほど自己保障へ、という移行が自然だと思う。

保険を厚く考えたいケース

保険を小さくできるかもしれないケース

ただし、医療保険・就業不能保険・個人賠償などは、死亡保険と同じ結論にはならない。何のリスクを、誰のために、何年カバーするのかを分けて考えるべきだ。

私ならこうする

保険の営業資料より先に、家計の固定費、保有資産、住宅ローンの団信、遺族年金を一覧にする。その上で、家族が困る「不足額」だけを定期保険で埋める。資産が増え、子どもが大きくなれば、保険は毎年見直す。

「死ななければ保険料が無駄」という言い方は正確ではない。保険料は、万が一の時に家族の生活を守るためにリスクを移転した費用だ。ただし、必要額を超えた保険料を長く払い続ける必要もない。保障を買うことと、資産を育てることを混同しない。これが一番大切だと思う。

出典

最終更新:2026年9月22日。制度・保険料・必要保障額は個別条件で変わります。契約前に公的機関・保険会社の資料や専門家へ確認してください。