Hyperliquid(ハイパーリキッド)は、「いつでも使える世界の金融市場」をつくろうとしているサービスだ。まだ難しい言葉が多い世界だが、考え方はシンプル。世界中の人が、スマホとネットだけで、株・暗号資産・商品などの値動きに24時間アクセスできる。その取引が増えれば増えるほど、取引所には手数料が入る。そこに投資の面白さがある。
本稿は仕組みを知るための記事であり、売買のおすすめではありません。特にレバレッジ取引は、短時間で大きな損失や強制決済が起こりえます。「仕組みへの投資」と「自分でレバレッジ取引をすること」は別の話です。
一言でいうと、何が新しいのか
今の株式市場には「開く時間」がある。日本株なら、ふつうは平日の決まった時間しか売買できない。国境もある。日本の個人が海外の金融商品に触れるには、口座、通貨、手続きなどの壁がいくつもある。
Hyperliquidが目指すのは、その壁を小さくすることだ。暗号資産だけでなく、個別株・指数・金・為替などの価格の動きを、同じ画面・同じお金(主にUSDC)で、原則24時間取引できるようにする。例えるなら、東京、ニューヨーク、ロンドンに別々にあった市場を、いつでも開いている一つの巨大な駅へ集めようとしている。
消費者に何ができるようになる?
- ① 市場が閉まっている時間にも、値動きに反応できる
- たとえばソフトバンクグループを参照する「SOFTBANK」の市場なら、東京市場が閉じた夜や週末でも価格の上下を取引できる。
- ② 一つの口座感覚で、いろいろな市場を見られる
- 暗号資産だけでなく、株式や金のようなテーマまで、同じ仕組みの中で比較・取引できる。国ごと・商品ごとにサービスを渡り歩く手間を減らす発想だ。
- ③ 上がると思う時だけでなく、下がると思う時にも取引できる
- 価格が上がる予想なら「買い」、下がる予想なら「売り」から入れる。これは便利な反面、予想が外れたときの損失も早い。
ここで大事な注意点がある。SOFTBANKのようなものは、ソフトバンクグループの現物株そのものではない。株価に連動することを目指す「Perp(パープ)」という契約である。配当も議決権もなく、価格が逆に動けば損が出る。便利さと引き換えに、現物株より難しい商品だ。
難しい単語は、この三つだけでいい
- 現物
- 本物を買って持つこと。現物株なら株主になる。
- Perp(無期限先物)
- 本物ではなく、「価格が上がるか下がるか」を取引する契約。期限がないため24時間動かしやすいが、損失が大きくなれば強制的に終わらされることがある。
- DEX(分散型取引所)
- 銀行や証券会社がすべてを管理するのではなく、ブロックチェーン上の仕組みで取引する市場。自分で資産を管理しやすい反面、パスワード・送金・システムの責任も自分に近づく。
(四半期集計の合計)
出所:CoinGeckoの2025年レポート、DefiLlamaの四半期データ。出来高は「売買された金額の合計」で、利用者が儲けた金額ではない。収益はデータ集計上のプロトコル収益を合算した値。
なぜ、この業界は伸びるかもしれないのか
投資テーマとして見るなら、ポイントは「暗号資産が上がるか」だけではない。世界にはもともと、株・先物・FX・商品を売買する巨大な市場がある。その一部が、24時間・国境をまたいで・より少ない中間業者で使える市場に移っていくなら、取引の置き場所そのものが変わる可能性がある。
取引所ビジネスはわかりやすい。人が売買するたび、少しずつ手数料が入る。カフェが一杯のコーヒーで利益を出すように、取引所は一回の取引から小さな手数料を得る。利用者が増え、売買が増え、扱える商品が増えれば、手数料の総額も増える。Hyperliquidでは2025年、集計ベースで約9.7億ドルのプロトコル収益があった。この数字は「もう小さな実験ではない」ことを示している。
そして個別株Perpは、その次の一手として見える。暗号資産に興味がない人でも、「夜に米国株や日本株のニュースを見て、価格の動きを見たい」という需要はある。そこに十分な流動性と安心して使える仕組みがつけば、金融の利用者層が広がる余地がある。
いろいろな市場を売買
取引ごとに手数料
流動性・開発者・基金など
価格上昇を保証するものではない
手数料の一部はHYPEの買い戻しやバーン(使えない状態にして供給を減らすこと)につながる仕組みになっている。だから「取引が増える → 手数料が増える → HYPEの需給に良い影響が出るかもしれない」という期待が生まれる。ただし、これは価格上昇を約束する機械ではない。競合の登場、規制、相場の下落、トークンの売りなどで、期待どおりにならないことも十分ある。
投資の入口は二つ:HYPEを持つか、DATを持つか
1. HYPEを直接保有する
HYPEはHyperliquidのトークンだ。「この市場が大きくなる」と直接考えるなら、最も近い入口になる。反面、価格の上下はとても大きく、保管や利用可能なサービスの確認も自分で行う必要がある。日本から使えるサービス・ルールは変わるため、実際に買う前に必ず確認したい。
2. Hyperliquid Strategies(NASDAQ: PURR)のようなDATを持つ
DAT(Digital Asset Treasury)は、暗号資産をバランスシートで保有・運用する上場会社のことだ。Hyperliquid Strategiesは2025年12月にNASDAQへ上場し、HYPEを蓄積・ステーキングする戦略を掲げる。株式PURRを買うことは、HYPEそのものではなく「HYPEを大量保有し、資本調達や運用も行う会社」の株主になることだ。
DATは、暗号資産をたくさん持つ上場会社のこと。PURRを買うと、HYPEそのものではなく「HYPEをためて運用する会社」の株主になる。トークンを自分で保管しなくてもテーマに参加できる可能性がある一方、会社の増資、経営、借入、株価の人気にも左右される。つまりPURRは「Hyperliquid社の株」でも「HYPEそのもの」でもない。
DATを見るなら、難しい数字を全部追う前に、1株あたり何枚のHYPEを持つ会社なのか/株数を増やしすぎていないか/借金が多すぎないかの三つから見ればいい。
このテーマを見るときの、やさしいチェック項目
- 本当に使う人が増えているか:出来高と手数料は伸びているか。
- 暗号資産以外にも広がるか:株・金・為替のような商品で、便利さを感じる人が増えるか。
- 競争に勝てるか:他の取引所より、使いやすさ・流動性・信頼で選ばれるか。
- 自分は何を持つのか:HYPEを直接持つのか、PURRのようなDATを持つのか。二つは別のリスクを持つ。
- レバレッジ取引はしない/少額にする:成長テーマに投資したいだけなら、Perpで大きく賭ける必要はない。
Hyperliquidの本当の賭けは、「暗号資産の取引所が伸びるか」ではなく、将来の金融市場の入口を取れるかだと思う。夜でも週末でも、世界のいろいろな値動きにアクセスできる市場が当たり前になれば、そこを通る取引は増える。取引が増えれば、手数料ビジネスは大きくなる。その可能性に投資したい人にとって、HYPEやDATは一つの入口になる。ただし新しい市場は、便利になるほど規制・事故・競争の問題も大きくなる。期待だけでなく、利用者と手数料が本当に増え続けるかを見ていきたい。
参照した資料
- CoinGecko, State of Crypto Perpetuals Report 2026(2025年のPerp DEX全体出来高)
- CoinGecko, 2025 Annual Crypto Industry Report(Hyperliquid年間Perp出来高)
- DefiLlama, Hyperliquid protocol dashboard(2025年四半期のgross protocol revenue)
- Hyperliquid Docs, Fees(手数料体系・配分)
- Hyperliquid Docs, HIP-3(builder-deployed Perp)
- Hyperliquid Strategies, SEC Exhibit 99.1(上場時期・DAT戦略)
数値・制度は参照時点のもの。暗号資産市場、取引可能地域、上場銘柄の状況は変化するため、実際の取引前には必ず一次情報を確認する。